両親は、自分の意見を伝えるとき、いつも怒っていた。
「言い方をやわらかくする」という発想が、そもそもなかったんだと思う。
私も自然とそれを学び、身につけた。
だから、誰かに何かを伝えるときは、「怒ること」が普通だと思っていた。
職場など、公の場ではさすがに怒れない。
でも「どうしても伝えたいこと」があったとしても、そこで選べる手段は「我慢」しかなかった。
言っても伝わらない。怒ったら嫌われる。自分が我慢して気にしないようにする、問題なんて無いと言い聞かせる。
そうやってずっと、自分の気持ちを押し込めてきた。
何気ない日常会話の中で、「結婚してから夫婦喧嘩をしたことがない」という話を聞いて、心底びっくりした。
「喧嘩しないって、言いたいことがないってこと?」と思った。
相手とうまくやっていくには、「自分が我慢する」か「相手をやり込めて言うことを聞かせる」か、どちらかしかないと思っていたから。
まさに「支配か、服従か」。
それ以外の選択肢なんて、知らなかった。
でも今、書籍や動画、そしてカウンセリングを通して、初めて実感した。
「感情を爆発させなくても、自分の気持ちを伝える方法」が、本当にあるんだということを。
もちろん、そういう方法が世の中にあることは、頭では知っていた。
でも、それはまるで遠い世界の話。私には手の届かない、夢物語のように感じていた。
けれど今、「もしかしたら私にも、自分の気持ちを穏やかに伝えられる日が来るかもしれない」と思えるようになってきた。
まだうまくできないし、正直とても不安だ。
今までの自分を思い出すと、つらくなるときもある。
でも、ほんの少しずつでも、できるようになりたい。
自分と自分の大切な人を守るために、伝えることを覚えたい。